建築業界

建築基準法の実態について

本日は建築基準法の実態について解説していきたいと思います。
ちょっと専門家向けの内容です。

建築物ってどんな基準があるのか?そもそも建築基準法って?その辺りの実態を把握する一助となればと思います。

建築基準法とは

建築基準法は建築を立てる際に守らなければいけない建築物の最低限の基準を定めた法律です。

建築の敷地や構造設備に関係はありますが、土地の権利などの不動産や土木工事はまた別の法律となっています。あくまで建築物を立てる際の基準に関しての法律です。

建築基準法の体系

建築基準法には、様々な法律・政令・規則が関係してきます。

まず建築基準法自体は、以下の階層構造となっています。
下にいく程細かい基準が定められており、告示は毎年のように改正・追加されています。

法律 建築基準法
政令 建築基準法施工令
省令・告示 建築基準法施工規則・国土交通省告示

さらにここに、地方ごとに定められる条例・規則があります。

条例 建築基準法施工条例
規則 建築基準法施工細則

そして国土交通省住宅局長通知など、技術的助言・通達でさらに追加の基準があります。

その他、建築基準法に関連して守らなければいけない法律・規定(建築基準関係規定)もあります。
これは建築基準法施工令第9条に消防法・都市計画法など16の規定が定められております。

建築基準関係規定 消防法・水道法・都市計画法などの一部。

建築物を建てる際には、これら全ての規則を守らなければなりません。

建築基準法の構成

ひとまず、建築基準法自体の構成を見てましょう。

建築基準法は「章」「節」「条」「項」「号」の順で細分化されています。

最も大きい区分の「章」の構成を目次で見ると

第1章 総則

第2章 建築物の敷地、構造及び建築設備

第3章 都市計画区域等における建築物の敷地構造建築設備及び用途

第3章の2 型式適合認定等

第4章 建築協定

第4章の2 指定建築基準適合判定資格者検定機関等

第4章の3 建築基準適合判定資格者等の登録

第5章 建築審査会

第6章 雑則

第7章 罰則

と言う構成になっています。

これらをわかりやすい記述にしてみると以下のようになります

第1章 概要

第2章 単体の建築物の規定(単体規定)

第3章 都市計画上の建築物の規定(集団規定)

第3章の2 1〜3章が適用除外される例外(認定方式)の認定基準

第4章 市町村が定められる基準

第4章の2〜3 建築基準法の確認機関について

第5章 建築基準法に基づいて審査を行う機関について

第6章 雑則

第7章 罰則

となります。

第1〜3章、6章が建築を建てる際の具体的な基準、

それ以外が建築基準法自体の規則

とざっくり分けることができます。

建築基準法は日本で1番難解⁉︎

なぜ難解と言われているのか

建築基準法は日本で1番難解な法律と言われています。
もちろん六法全書の方が覚えるなら難しいのですが、建築基準法は解読が非常に難しいのです。日本語で書かれているはずなのに、何を言われているのか意味が分からない…、となります。

私が考えるに理由は3つあります。

①図で書かないとわかりにくいような内容を、全て文章だけで表現しようとすること
これは対象が立体的な建築物ならではの問題かもしれません。

②法律上の専門用語が多すぎること
何百もの建築基準法用語が定義されて使われています。正確に定義を覚えることは困難です。

③関係規定が多いこと
消防法・都市計画法など、建築基準法には他の法律が関係してきます。

これらの理由から建築基準法の難解さが生まれていると思います。

法令集が手元に無くても、政府がネット上で公開していますので、確認してみましょう。
e-Gov法令検索

第56条(建築物の各部分の高さ)などが、難解さが分かりやすいかもしれません。

建築士も全てを把握できている人は少ない

実際に建築設計者も基準法全体を正確には把握しておらず、図解で表現されている書籍や経験を元にして行き当たりばったりで設計している者がほとんどです。

そうしてできあがった設計図書を、確認検査機関がチェックします。そして指摘された部分を設計変更していきます。
あまりに基準に適合しない設計をしていると、最終的なものが元の設計とかけ離れたちぐはぐな設計をしてしまうことになります。

確認検査機関も全てを把握できている人は少ない

しかし、確認検査機関も全知全能というわけではありません。
法律を専門的に扱っているので、建築士よりも詳しいことは間違いありませんが、
色んな解釈ができる記述に関しては、検査機関によって解釈の仕方が違います。

あっちの検査機関ではOKだった建物が、こっちの検査機関ではNGということもあります。
研究者に聞いてみると、検査機関用の講習会テキストで、既におかしな解釈がされているという話も…。

細かい部分においては、もはやどれを信じればいいのか分からなくなっております。

基準法に適合しなかったらどうなるのか

建築物を建てる場合、確認審査機関から確認済証の交付を受けなければなりません。

もし確認済証の交付を受けず建築した場合は、建築物の使用禁止や、最悪の場合には取り壊しをしなければならなくなります。

また、違反した設計者や工事管理者は免許の取消しや業務の停止処分などを受けます。

まとめ

  • 建築基準法は様々な規則と関連しており、幅広い体系を持つ
  • 文章では分かりにくい内容・専門用語・関連規則の多さなどにより解読が難解な法律となっている
  • 建築士も図解した本などを用いて、四苦八苦しながら読み解いている

いかがでしたでしょうか。

私自身も記事にしてまとめていくことで、全体を把握し復習することができました。

あくまで最低限の基準ですので、基準を守ることだけでなく利用者のことを考えた使いやすい設計を心がけたいですね。

それでは。