去年の秋頃、佐藤武夫の作品を求めて、北海道博物館に行ってきました。
佐藤武夫とは現在の佐藤総合計画を立ち上げた人で、日本で初めて音響設計を行った人で す。(wikipedia:佐藤武夫)
その設計は細かいグリッドによって構成された、宝石箱のような美しい外観が特徴です。
新橋駅前ビル。佐藤の巧みなグリッド構成がよく分かる。
北海道博物館は、その佐藤武夫の晩年の傑作です。佐藤の死後に建築学会賞を授賞しており、業界でも高い評価を得ています。
土地に適したレンガ建築
正面玄関。軸線と階段により館内への期待感が高まる演出。開拓記念館であったこともあり、「権威的に見える」との不評もあるとか…。
北海道博物館の特徴は、なんといっても圧倒的な大きさと、その大きな箱を覆い尽くすレンガです。コンクリート造の構造体が全く見えないくらいに、中も外も無数のレンガが張られています。これにより北海道の厳しい気候に耐えられるとともに、森の中に溶け込んだ建築となっています。
アプローチは軸線が強調され、ぱっくりと口を開けたようなガラス壁が来館者を誘っております。シンプルな構成ながら、西洋の神殿のような柱が建物に奥行きを与え、近づくとその巨大さの迫力に圧倒されます。
レンガが普通サイズであるからこそ、建築の巨大さとレンガの繊細さが際立つ
では中に入っていきましょう。
レンガの繊細さと大迫力の吹き抜け。
中に入ると3層分の吹き抜け空間が出迎えてくれます。あまりの迫力におおっと言う声が出てしまいました。
天井まで伸びるまゆ玉のような照明は特注で、夕方になると綺麗な灯りとなるのだとか。
やはりここでも特徴的なのはレンガです。
内部も全てレンガで覆われ、その小さなサイズが繊細さを出しています。細かいグリッドで美しい建築という、佐藤の特徴が出ている空間です。
小口を出っ張らせた縦のラインが天井の高さを強調しています。陰影が綺麗ですね。
階段を登り、左手には博物館の入り口が。両脇の照明と柱がかっこいい。ゲームのラスボス前のようです。
反対側の右手には演奏会が行われる部屋がありましたが、コロナにより入れず…。少し覗いた感じ、こちらも非常にかっこよく、壁に蹄鉄を埋め込んだ大迫力のホールとなっておりました。いつか入りたい…。
手仕事が光る、工芸品のような建築
博物館を観覧し、3階からホールを見下ろしました。タイルは植物を模した模様になっています。これは恐らく工場で製作した無地のタイルに、手作業でモザイクタイルを貼っていったのでしょう。机が赤い実のようになっていて、可愛らしくもオシャレですね。
ガラス面に設置してある鉄柵も曲線を多用した凝ったデザイン。照明も特注。そしてなにより、この辺り一面のレンガは一つ一つ手作業で組まれたものです。
本当に至るところが手仕事で施工されており、だからこそ繊細さを感じる工芸品のような素晴らしい建築ができているのでしょう。
- 佐藤武夫による迫力と繊細さを兼ね備えたデザイン
- 土地に馴染んだ赤煉瓦の外観
- 途方もない手仕事による、工芸品のような建築
いかがでしたでしょうか。
手仕事が無くなりつつある今、こんな建築は日本ではほとんど見ることができません。北海道に旅行した際には、穴場の観光地として是非お立ち寄りください。
それでは。